2015年6月の記事一覧
キンガロイ高校来日
SSH講座「ウニの受精と発生を観察しよう」を行いました。
平成27年6月27日(土)午後および6月28日(日)午前にスーパーサイエンススクール(SSH)のSS生物ユニットの講座として「ウニの受精と発生を観察しよう」を実施しました。
今年はタコノマクラを用いて、受精と発生の様子を観察しました。生徒一人ひとりが卵を受精させて、自分が受精させた胚が発生していく過程を継続的に観察しました。また、受精卵を8℃、15℃、室温、30℃の各温度で発生させ、温度による発生速度の違いを確かめました。
タコノマクラの口器にKClを注射して、卵や精子を放出させる。
希釈した精子液を卵の入った海水に滴下し、撹拌して受精させる。
受講した生徒は、採卵・採精の方法や受精の瞬間、受精膜が上がる様子、初期卵割、胞胚、原腸胚の各発生段階の形態、卵のゼリー層、精子等を実物で観察し、発生学の基本を体験的に学習することができました。
タコノマクラの管足
受精卵 受精膜が上がっている。
卵の大きさを測定する。
二細胞期
原腸胚(初期) 小割球に由来する一次間充織細胞が生じている。植物極から陥入が始まる。
講座の最後には、偏光板を顕微鏡につけて、炭酸カルシウム結晶の複屈折性を用いて光らせた原腸胚の三ツ矢型の骨片を観察しました。
偏光で骨片を光らせる。
観察に先立って行った講義では、「棘皮動物の系統分類と特徴」や「ウニ卵の発生」について、映像とスライドを用いて体系的に幅広く深く学びました。
この講座を受講した生徒は、生命の誕生や生物の体の作り方について興味を持ち、生物の学習意欲向上や生命科学分野への進路選択につながると思います。
SSH講座「光る大腸菌をつくろう!」を行いました。
この講座の目的は、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを大腸菌に導入して発現させ大腸菌を発光させる実験をとおして、分子生物学の基礎を体験的に楽しく学習することです。
当日は知的好奇心の旺盛な生徒で生物実験室が埋まりました。講座では、まず、英語のスライドで2008年ノーベル化学賞受賞の下村脩先生が発見したオワンクラゲに由来する緑色蛍光タンパク質の生命科学への応用や細菌の形質転換の方法と選別のしくみ、導入したプラスミドの遺伝子形質発現のしくみ等について講義を聴き、その理解を深めました。
続いて大腸菌を用いて形質転換の実験をしました。実験は、生徒自身が実験操作の意味や目的を思考し、判断し、操作すること、および充実した個別指導ができるよう二人一組で実施しました。実験では無菌操作などの微生物学実験の基本を体験できました。
形質転換させる大腸菌をプレートからすくい取り、緩衝溶液に溶かす。
GFP遺伝子を組み込んであるプラスミドを大腸菌に加える。
42℃でヒートショックを行い、プラスミドを大腸菌に導入する。
形質転換された大腸菌を選別する抗生物質のアンピシリンに抵抗性を持たせるため、LB培地を加え、10分間、室温で放置する。
大腸菌をプレートに滴下し、広げる。その後、37℃で翌日まで培養する。
講座はほぼ3時間半連続しましたが、どの生徒も講義や実験に向き合う姿勢はとても意欲的で、最後まで集中力を切らさず、熱心に取り組んでいることが印象的でした。
翌14日(日)は、前日の実験の結果とその考察をしました。まず、培地の種類によるコロニー(細胞集団)形成の有無とコロニーの形態の特徴を観察しました。次に、形成されたコロニーに紫外線を照射して発光の有無を確認し記録をとりました。最後に培地に添加した抗生物質や発現調節をする物質の有無により、コロニーの形成や発光に違いが生じた理由を考察しました。
プラスミドが導入されて形質転換した大腸菌は、アンピシリンで選別され、培地に添加したアラビノースによりGFP遺伝子が発現する。紫外線を照射すると緑色の蛍光を発する。(写真 左から2つめのプレート)
この講座に参加した生徒は、形質転換(遺伝子導入)の実験を体験したことで、遺伝子を操作して生物に目的の性質を持たせたり、有用な物質を生産するバイオテクノロジー(生物工学)の理解が深まったと思います。この体験は今後の生物の学習や進路選択によい影響を与えると思います。